P&P(九州大学教育研究プログラム・研究拠点形成プロジェクト)
 
 
好酸性鉄還元細菌を利用した重金属および放射性元素の新規バイオレメディエーション技術開発 ― 沖部奈緒子(准教授)
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研究概要

重金属や放射性元素による環境汚染は、鉱山開発に伴って発生する鉱害(酸性鉱山廃水)として、または原子力事故・兵器製造などに由来する公害として世界各地で発生している。汚染物質であるクロム(Cr6+)やウラン(U6+)は、還元することで溶解度が下がり、不動化することが可能な元素である。クロムやウランによる汚染環境(酸性鉱山廃水や放射性廃棄物溶液)の多くは、酸性pHである。この場合、生育至適pHを酸性とする好酸性細菌のクロム・ウラン還元能を利用することができれば、効果的なバイオレメディエーション技術への応用が期待できる。

本研究では好酸性細菌におけるクロム・ウラン還元能について検証することで、新規バイオレメディエーション技術開発へ向けた新たな知見を収集することを目的とする。



研究の背景
微生物を利用して重金属や放射性元素などで汚染された環境を修復する技術をバイオレメディエーション技術と言う。
溶解した重金属や放射性元素の無毒化・不動化を促すメカニズムには、様々な微生物の表面特性や生理学的特性が関わっている。メカニズムとしては、生物吸着、生物沈殿、生物濃縮、生物変換などが挙げられ、複数の作用が関連する場合も多い(Tsezos, 2007)。このうちの「生物変換」には微生物による酸化・還元反応が含まれるが、微生物がクロム(Cr6+)やウラン(U6+)を還元する性質は、これら汚染物質のバイオレメディエーション技術開発への応用が期待できる。

クロムによる水圏の汚染は、鉱山開発を始めとした産業活動によって生じる。クロムは環境中で主にCr6+またはCr3+として存在し、Cr6+(クロム酸; CrO42- および二クロム酸; Cr2O72-)は可溶性で強い毒性を示す。一方、Cr3+は生体への毒性は低く、中性pHでは不溶性の水酸化物を生成しやすい。

また、ウランによる深刻な環境汚染は、鉱山開発、原子力開発、兵器開発などの要因で生じている。米国では冷戦終了後、米国エネルギー省(DOE)が全国120箇所をウラン汚染地域と特定し、迅速、安価、かつ環境負荷を最低限に抑えた汚染処理を目指し、本格的に微生物を利用したバイオレメディエーションを推進している (Wall and Krumholz, 2006)。好気性の水圏や土中においては、ウランは主に溶解性のウラニルイオン(UO22+)として存在している。この時のU6+の状態からU4+へ還元されると、溶解性が低下し、不動化が容易になる。

これらのことから、クロムおよびウランのバイオレメディエーションには、何れも還元反応(それぞれ、Cr6+ ⇒ Cr3+、U6+⇒U4+)に基づいたアプローチが有効である。
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活動報告

正木悠聖, 沖部奈緒子, 笹木圭子, 平島剛, 好酸性鉄還元細菌を利用したCr(Ⅵ)のバイオレメディエーションに関する研究,
資源・素材学会 ,2013.03.

正木悠聖, 沖部奈緒子, 笹木圭子, 平島剛, 好酸性鉄還元細菌を利用したCr(Ⅵ)のバイオレメディエーションに関する研究,
資源・素材学会,2012.09.(Presentation Award受賞)




メンバー

沖部 奈緒子(准教授・地球資源システム工学部門・資源処理・環境修復工学研究室)

正木 悠聖(修士1年)

牧 昌史(修士1年)